どんぐりおじさんの<人間関係論>

教育学を中心に、人間関係論やコミュニケーション論などに関する私案を、いろいろ書いています

モンスター・ママ!(その5)・・終り

                          モンスター・ママ!(その5)



                                   

先生とママの対話。


対話(1)。
佐藤「うちの子が、いつまでたっても、算数の成績がよくなりません! 一体、あなたは、どんな指導をしているのですか?」。
鈴木「こんにちは。担任の鈴木です。いつもお世話になります。お子さんの算数の成績が、良くならないので心配しておられるのでしょうか?」


佐藤「そうなんですよ! あなたの教え方が悪いのではないでしょうか?」
鈴木「鈴木さんは、私の教え方にご不満がおありなのでしょうか?」


佐藤「いや、先生の責任だけとは、いえないと思うのですが・・・・」
鈴木「私の責任だけではないかも知れないと?」


佐藤「そうです。家では、ほとんど勉強をしてないし、原因はいろいろかも知れません」
鈴木「そうですか。私も教え方を、いろいろ考えて見ますので、もう少し、お時間を頂きたいのですがいかがでしょうか?」


佐藤「わかりました。先生とお話が出来て、気が晴れました。これからもよろしくお願いします」
鈴木「こちらこそ。嬉しかったです。又、何か有りましたら、ご遠慮なくお電話ください」


佐藤「ありがとうございます。失礼します」
鈴木「失礼します」



対話(2)。
佐藤「うちの子が、いつまでたっても、算数の成績がよくなりません! 一体、あなたは、どんな指導をしているのですか?」。
鈴木「こんにちは。担任の鈴木です。お宅のお子さんの算数の成績が良くならないのは、
私のせいだと言われるのですか?」


佐藤「そうなんですよ! あなたの教え方が悪いからです!!」(怒り!!)
鈴木「佐藤さん! そんなに決め付けないで下さい!」


佐藤「だって、算数を教えているのは、あなたしか、いないじゃないですか!」(ますます、興奮!!)。
鈴木「・・・・?!?!」(返答につまる)。



対話(1)における鈴木先生の視点。
鈴木先生は、絶えず、佐藤さんの<>に視点(焦点)を合わせて聴いています。
聞いている、のではありません。
聴いている、のです。


>とは、<気持ち(感情)、と、願い>です。
「どんな気持ちかな?」、「何を願っているのかな?」と。


ママは、自分の<>を、先生が受け入れてくれた事を感じ、自分の怒り、不満がだんだんと解消し、平静になって行ったのです。


二人の間には、<の交流>があったのです。
二人の関係は、前より、親密になったのです。




対話(2)における鈴木先生の視点。
鈴木先生は、絶えず、佐藤さんの発言の<事柄、内容のみ>に視点(焦点)を合わせて聴いています。
聴いていない、のです。
聞いている、だけです。


「ママは、何を言っているんだろう?」
「ママの怒りの原因は、どこに、あるのだろう?」と。


ママは、自分の<>を、先生に聴いて欲しいのに、<>を聴いてもらえず、<柄、内容>だけしか聞いてもらえないので、ますます怒り、不満は強まって行きました。


二人の間には、<の交流>がありません。
二人は、議論をしただけです。
二人の関係は、残念ながら、前より望ましくない疎遠なものになってしまいました。
不毛の対話です。




対話の原理(私の仮説)。
これまで、先生とモンスター・ママの対話を考察してきました。


これまでの考察から得られた結果は、<対話の原理>として、すべての人間の対話に適用できる、と私は確信しています。
この<対話の原理>は、現実の人間の対話を<観察すること>によって得られたものです。


対話の原理(1)
私とあなたが対話をしている時、あなたが、私の<>に焦点を合わせて、私の発言を聴いてくれるならば、二人の間には<の交流>が生じ、二人の関係は、前より、親密な、健全なものになるでしょう。


対話の原理(2)
私とあなたが対話をしている時、あなたが、私の発言の<事柄、内容>のみに焦点を合わせて、私の発言を聞くならば、二人の対話は、議論となり、二人の関係は、前より、不健全な、疎遠なものになるであろう。



おとな(先生。親)と、こどもとの対話。
対話の原理(1)は、理想の対話に適用されます。
対話の原理(2)は、(1)の正反対の対話に適用されます。


私達の家庭生活や教育現場で、大人(先生。親)と子供との間で、毎日、何百回も行われている対話は、(1)と(2)の混合です。


おとなと子供の対話が、理想に近い対話であれば、あるほど、子供の人間的成長は促進されます。ですから、おとなは、自分の発言、子供の反応を良く観察し、根気よく、少しづつ、理想の対話に近づけて行く努力が必要となるのです。 (おわり)
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      どんぐりおじさん
    

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